竜巻被害速報


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 【速報】北関東における竜巻被害―現況調査・補遺―

 【速報】竜巻被害による常陸大宮市の文化財被災の状況

 【速報】5月6日の竜巻によるつくば市北条の被災状況



【速報】5月6日北関東における竜巻被害―現況調査・補遺― (高橋修)

2012-05-10

 今回、北関東で発生し、茨城・栃木両県に被害をもたらした竜巻は、同時多発的に複数発生していたことが明らかになった。被害地域が、①茨城県常総市大沢新田→同つくば市平沢、②茨城県筑西市玉戸→同桜川市門毛、③真岡市小林→常陸大宮市野田と、東北方向に並行して広がることから、3つの竜巻の同時発生が想定されている(『朝日新聞』5月9日朝刊による)。
 もっとも甚大な被害をもたらした①の竜巻被害については、つくば市北条地区について、山川千博が、メールニュース43号で報告している。また③の到達点、常陸大宮市野田の被害状況については、同じく44号において、高村恵美が報告した。その後、5月10日、高橋が自動車で、②及び③が通過したと想定されている地域の概況を観察したので、その成果を、ここにまとめておく。
 まず③の痕を、常陸大宮市野田から南西に追った。すでに高村報告にあるように、野田地区では、住宅や倉庫に大きな被害が出ている。国道123号からも、屋敷林や鹿島神社の社叢が風圧を受けて、へし折られた様子が望見できる。集落に入ると、吹き飛ばされた倉庫一棟が目に入る。そこから谷筋に進むと、屋根や側壁に被害を受けた家々の痛ましい光景が連続する。すでに廃材が集積場所に積まれていた。
 野田地区から123号を茂木方向に進むと、なぎ倒された樹木や被災した家屋の屋根が竜巻の進路を示すように続く。栃木県に入り茂木町飯野の馬門の滝の国道向かい側の旧家が竜巻の直撃を受けている。長屋門や母屋の屋根や漆喰壁等に損傷を受け、屋敷林や裏山の木々がなぎ倒されている。
 建物や樹木に竜巻の爪痕を辿りながら、神井交差点から県道206号を南下し、さらに昭和ふるさと村から西行すると、茂木町大沢地区に至る。この辺りの被災状況は、もっとも惨い。住宅の屋根が崩れ、ビニールハウスが押しつぶされたようになっている。墓地の杉が折れ、墓石を倒す。道沿いの民家1軒は倒木で潰れている。公民館はすべての窓ガラスが失われていた。あちこちで看板が吹き飛ぶ。鶏舎(豚舎?)の屋根が吹き飛ばされている。この辺りから③竜巻の吹き始めの真岡市小林地区にかけて、住宅や倉庫、ビニールハウス、樹木等への竜巻被害が断続的に確認される。
 次に筑西市玉戸から②竜巻の痕を追った。国道50号を東北に走り、そこから北に入る道に何本も進入してみた。しかしこちらは、③とは対照的に、なかなかその被害の跡を明確に確認することができない。比較的新しいブルーシートと屋根瓦の乱れに、それかと思わせる景観がみられるが、東日本大震災の痕である可能性もあり、断定には至らなかった。情報を再整理し、あらためて状況確認に臨むことにした。
 短時間での、自動車を使っての限界のある実況検分であったが、特に③のルートには、相当の建物被害が確認できた。その中には旧家も含まれ、歴史資料の亡失が懸念される。地元での対応を注視しつつ、我々も、現地調査を継続して、情報収集に努めていきたい。

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【速報】5月6日竜巻被害における常陸大宮市の文化財被災の状況(高村恵美)


 5月6日に県内北部・西部および栃木県東部で発生した竜巻を伴う突風被害により、常陸大宮市内では御前山地域野田地区、秋田地区などの40世帯あまりが被害を受けた。
 地区内では被災翌日から片付けが始まっており、それに伴い、古文書、古資料、民具などが一括して処分されることが想定されたため、常陸大宮市教育委員会では5月8日に現地で文化財被害調査をおこなった。被害を受けたお宅のうち、倉庫の解体や処分が予想されるお宅を周り、資料の廃棄についての聞き取りと寄贈依頼をおこなった。
 市による建造物等の被害調査は、被災翌日の7日に済んでおり、それに基づく被災状況地図および情報の提供を市安全まちづくり推進課より受けた。
 被害の大きいのは野田地区の14軒で母家、倉庫の全半壊、一部損壊などの被害があった。
 常陸大宮市内では幸い母家が全壊する家はなく、倉庫の全半壊や屋根瓦が落ちるなどの一部損壊がほとんどであった。倉庫の被災については、20~30年ほど前に使用していた(現在は使われていない)煙草の乾燥場を倉庫として転用している家が多く、その倉庫が被災するケースが目立った。煙草の葉を高く吊って乾燥させることを目的としているため、内部に梁などの構造物が少なく、また屋根が高く作られているため、強風に耐えられなかったものと思われる。
 指定文化財、登録文化財の被害はない。また、野田地区、秋田地区は古文書の悉皆調査は未実施であるが(2013実施予定)、地元への聞き取り調査でも被害を受けた家のうちに古文書を所蔵する家はないと思われる。
 野田地区で最も大きな被害のあった家は下記の2軒で、いずれも乾燥場を転用した倉庫が全壊したものである。
 1軒は、家主によれば倉庫の内部に民具、農具、昭和初期の雑誌類がある可能性があるが、全壊のため現状では中に入れなかった。家主は高齢のため、週末に来る家主の家族と面会して、今後の処置に関して協議する予定にしている。
 もう1軒は解体のため、屋根を外し、中のものもすでに出されていた。家主によれば中にあったのは長持、箪笥のほか雑多な生活用具だったようだ。すでにほとんど処分場へ運んだとのことであった。このお宅にはもう1棟蔵があり、こちらに古書籍や農具などが収納されているが、被害はなかったので処分される心配はない。
 そのほか、倉庫の改修や後片付けをおこなっている家に資料を廃棄しないようよびかけるチラシを配布した。
 また、前述のように乾燥場の骨組みの歪みや傾きは多数みられる。これらを解体する家は今後も増えることが予想される。近代に煙草生産で栄えた当地の面影を、早急に記録する必要がある。解体前の撮影や聞き取り調査などで対応していく予定である。
 市域の被災地域は幸い小さな範囲で済んでいるので、今後も巡視などで被害状況把握に努めるつもりである。

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【速報】5月6日の竜巻によるつくば市北条の被災状況(山川千博)

2012-05-08

はじめに
 5月6日に発生した竜巻により、茨城県つくば市・常総市、栃木県真岡市・益子市・茂木市をはじめとして、各地において被災された方々に、心からお見舞いを申し上げます。
 茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク準備会(茨城史料ネット)では、災害発生から3日目の5月8日、被災地の中でも特に大きな被害が報じられた、つくば市北条地区を訪れ、被害の確認調査を行いました。この時の知見をもとに、同地区の被害の概要及び、文化財・歴史資料の被災状況について、簡単に報告したいと思います。

1、竜巻の進路と北条地区の被害
 常総市大沢新田で発生したとされる竜巻は、北東方向へと進み、つくば市北条地区で国道125号線を横切り、雇用促進住宅北条宿舎を襲いました。宿舎ではガラスが割れ、多くの家財道具が瓦礫として搬出されています。その後竜巻は、主要地方道取手・つくば線や、県道石岡・つくば線沿いに展開する商店街・住宅地に大きな被害を及ぼしながら、県道筑波山・公園線(旧つくば道)沿いの谷へと入り込み、さらに北東方向の集落(市立北条小学校北側)へと抜けました。竜巻が直接通過した場所では多くの倒壊家屋が見られ、竜巻の外縁部に接触した多くの家屋でも、屋根・壁などに被害が出ています。

2、指定文化財の被災状況
 大きな被害を受けた県道石岡・つくば線沿いの商店街には、国の登録有形文化財が2件存在します。そのうち旧矢中家住宅(建物2棟)では、瓦や壁の一部が崩落し、窓ガラスが何枚か割れるなどの被害がでています。その保全には、以前からNPO法人「”矢中の杜”の守り人」が関わっており、今回の被災に際しても、いち早く対応していました。災害発生3日目にして、旧矢中家住宅への応急処置はほとんど終えているようです。また、もう一件の宮本家住宅(建物8棟)では、瓦の一部が破損したものの、それ以上の大きな被害は受けていませんでした。
 他にも北条の商店街付近には、県指定文化財・八坂神社石造五輪塔や、市指定文化財・毘沙門天種子板碑が存在しますが、どちらも、竜巻の通過ルートから僅かに外れており、被害は確認されませんでした。

3、古民家・土蔵の被災状況
 指定文化財以外にも、北条の商店街や県道筑波山・公園線沿いには、旧家が多く存在し、歴史的な町並みを形成しています。今回の確認調査にあたり、古民家にお住まいの方や土蔵を所有するお宅には、東日本大震災への対応時に作成した、「被災した歴史資料についてのお願い」というチラシを配布して回りました。そうした活動の中で、あるお宅の土蔵1棟に立ち入らせていただき、所蔵資料の確認を行いました。土蔵は、以前煙草の乾燥に使用したもので、中にはほとんど何もない状態でしたが、古い写真を10点ほど見つけたため所有者に説明し、保全をお願いしました。
 また、別のお宅では、家屋の外壁が剥がれ落ちて中に多くの掛け軸等が見えたため、確認したところ、200点以上の掛け軸を確認しました。今回は写真を撮影させていただき、今後の所蔵方法に関しては、後日、家屋内部の片付けが済んだ後、改めて相談に伺うことになりました。

4、周知の歴史資料の被災状況
 今回の調査にあたり、北条地区に、周知の古文書を所蔵するお宅が数件所在するという情報を、NPO法人歴史資料継承機構から事前に得ていました。被災地外縁部での聞き取り調査の結果、古文書を所蔵するお宅のうちの何件かは、商店街の中でも激甚な被害を受けた部分に位置していることがわかりました。現地ではすでに、瓦礫の撤去や被災した家財道具の搬出など、家屋・土蔵内部の片づけが始まっており、その中に含まれる歴史資料の流出が心配されます。しかし、まだ災害直後であり、被災者の心情を考慮すると、所蔵資料に関する詳しい質問は憚られ、今回はチラシの配布のみを行うに止めました。幸い、そのうちの一件のお宅では、後日もう一度来てくださいと言っていただけたため、今後、時機を見て再訪する予定です。

5、今後の課題
 今回、茨城史料ネットとしては、東日本大震災の被災資料への対応が終わらぬうちに、新たな被災資料への対応の必要が生じました。つくば市北条地区を通過した竜巻は、局地的にですが、建造物に非常に大きな被害をもたらし、その中に所蔵される歴史資料についても大きな被害が予想されます。今後、この確認調査で得られた知見を広く配信し、地元自治体、地域住民、他団体と協力しながら、文化財・歴史資料の保全に努めなければなりません。
 また、周知の古文書が流出の危機に瀕しています。しかし、所蔵者にとっては、ライフラインの復旧・瓦礫の撤去等、生活復旧が最優先の課題です。生活が落ち着いて、その後にようやく歴史資料の保護など、違った場所に目を向けられるのでしょう。今後、早過ぎず、遅過ぎず、このタイミングを慎重に見極めつつ、今回把握した所蔵者のもとへ、再訪しようと思います。
 北条地区のみならず、竜巻が発生した地点とされる常総市大沢新田から、北条地区へ至るまでの地域にも、当然ながら被害は出ています。この間には、水守・山木などの旧集落が所在し、今後はこれらの地域への確認調査も必要になるでしょう。さらに、被害が報告されている常陸大宮市・桜川市などでの文化財・歴史資料被害に関しても、確認を急がねばなりません。これらの地域に関しても、広く、情報提供を呼び掛けたいと思います。
最後になりますが、今回の竜巻被害による被災地の、一刻も早い復興を願っております。

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